近年、すっかり洋服に慣れてしまった私たちは特別な日を除いて着物を着る機会がめっきり少なくなってしまいました。しかし、私たち日本人にとって着物は伝統的なものであり、あこがれの衣装。そして、海外に誇れる日本の伝統文化の一つです。海外に出かけるときは出会いの縁として一着は持っていきたいものですよね。今回は川越で呉服屋として店を開いて100年を迎える『呉服笠間』のご主人・笠間さんにお話を伺ってきました。


着物というと敷居が高い感じがして呉服屋に入ったら何十万というものを買わされてしまう。そう思われている方もいらっしゃるかと思います。実際、買わされたとか、買っちゃったという言葉につながっています。でも、普段着きものならリーズナブルなお値段でつくれますし、普段何気ないときに着ていただくと、そのよさがわかると思います。着物というものは高いものではなく、気軽に身近に着ていただけるもの。買わされたと思うものではなく、自分から買いたいと思うものにしていきたいんです。お客様に「着物を買ってよかった。笠間さんで買ってよかった」と言っていただけるお店にしていくのが一つの目標です。
ですから、みなさんに日ごろから着物に親しんでいただけるよう、私どもの店では一年を通して着られる普段着きものを取りそろえています。それに合わせて帯や小物も扱っていますので、トータルなコーディネートも可能です。もちろん、ないものはご希望を聞かせていただき、取り寄せることもできます。せっかく、購入していただくのですから、気に入ったものを買って、末永く着ていただきたい。そのためのサポートを精いっぱいさせていただきたいですね。
その中でも主流として扱っているのが、川越の伝統織物である「川越唐棧(かわごえとうざん)」です。この生地は、木綿でありながら、絹そっくりの風合いを持っているのが特長で、柄も100種類ほどあります。その由来は江戸時代末にさかのぼります。当時、幕府は「庶民はぜいたくをしてはいけない。絹なんか着ないで、木綿を着なさい」という風潮がありました。ところが普通の綿では着心地があまりよくない。そこで、川越の商人は、綿で絹の味を出そうと、綿でも絹に近い糸を手に入れて、唐棧を作らせました。それが、江戸の幕末から明治にかけて非常に売れたんです。それで、「唐棧」といえば「川越」といわれるようになりました。ですから、この「川越唐棧」は、私どもにとって大切に扱っていきたい商品の一つなんです。着る時期は真夏を抜いて、4~6月、9~11月くらいがちょうどいいですね。また、一年を通して着物を楽しんでいただけるよう夏場に着るものとして「木綿ちりめん」、10月から4月くらいまで着る冬場のものとして「うーるきもの」もご用意しています。
3年前に東京で開いた展示会をきっかけに「かわいい」というキーワードに基づいて、もの選びをするようになりました。でも実際、仕入れようとすると、東京や京都でも欲しいものが見つからないこともしばしば。そこで、最近はフランスのトゥールという地方からインポートの生地を買ってきて、表はインポート、裏は川越唐棧の生地を使ってオリジナルの帯をつくるようになりました。インポートの生地は比較的かわいい柄が多いので、女性にも受けがいいんですよ。それに素材を探したりするのが楽しいんです。この帯と川越唐棧の着物と合わせると、これがなかなかいい感じで合うんですよ。
今、実際にアメリカに住んでいる日本人で、着物生活を続けてくださっている方がいます。その方は2歳くらいになるお子さんを連れてカルチャースクールに行くときや社交的な場に出るときは、川越唐棧などの着物を着ていかれるようなんです。なぜ、着物を着ていくかというと、そこに参加している方々がすごく喜ばれるからだそうです。うちの母も海外に行ったときに着物を着ていると、「一緒に写真を撮ってください」とか声をかけられたりします。海外で、ちょっと着物を着るだけで、相手から話しかけてくれるんですよ。それってすごいことですよね。コミュニケーションが苦手な人でも着物を着ることで、それがきっかけとなって、始まる出会いがある。そこからすばらしい出会いが生まれるかもしれないんですから。そういう出会いのツールとしても使っていただきたいですね。持っていくときも着物ってスーツケースに入れるとぺったんこになるので邪魔にならないんですよ。
着物って一回つくったものを糸をほどいてあげると、また同じ反物のサイズに戻るんです。そして、それを縫い直すと、また着物に再生できる。汚れたり、切れたりしなければ、おばあちゃんから孫へと脈々と受け継いでいけるもの。おばあちゃんが着ていたものを孫が着るというのが普通のことなんですね。つい50年くらい前まではまだ一般的に着物が着られていたので、ご家庭のタンスにも、まだ、おじいちゃん、おばあちゃんの着物がきっとあると思います。それをきれいに洗って、また縫って着ていただけたらうれしいですね。色が地味でイヤなら、色を一度抜いてから染め変えることもできます。これって、かなりエコだと思いませんか? 着物を着るというのは実はエコにつながっている。そういう認識を持って、たくさんの方に着ていただきたいという願望がすごくありますね。あとはやっぱり死ぬまでに、何か新しいエコになるような素材を見つけて、世界に誇れるものを一つはつくってみたいなと思います。着物になるかはちょっと分からないですけど、ぜひ着物にしてみたいっていうのが今の夢です。
呉服笠間 四代目 笠間 美寛さん
Maki : Sue, look. These are rolls of the fabric used for kimono making. Once these are sewn together they become
kimonos.
マキ : スー、見て。これが反物よ。これを縫い合わせると「着物」がつくれるの。
Sue : These are ready to be made into kimonos!?
スー : これから「着物」ができるのね!
Maki : That’s one of the unique traits of a kimono’s design. If you take out the stitches, it becomes basically a regular roll of fabric. This means that even if it’s passed down many times over, it can still be recreated.
マキ : 着物のすごいところは糸をほどくとまた反物に戻ることだから、何度も再生させて、代々受け継いでいくことができるのよ。
Sue : Oohh! What a beautiful Obi (Kimono belt)!
スー : わぁ~きれいな帯!
Staff : This Obi is made with fabric from France on the face of it, and Japanese fabric on the back.
店員 : これは表はフランス、裏は日本の生地を使ってつくられているんです。
Sue : How lovely! Is this for sale?
スー : ステキだわ。これを売っていただくことはできますか?
Staff : Of course. It goes with almost any kimono, so it’s very useful too.
店員 : もちろんです。どんな着物にも合わせやすいので重宝しますよ。
Sue : This is very imposing artwork, isn’t it.
スー : 迫力のある絵ですね。
Staff : These are the faces of the ceremonial dolls used on the floats during the Kawagoe festival. They’re all hand-painted by artisans.
店員 : これは川越祭りのときに出される山車人形の面を描いているんですよ。すべて職人による手書きです。
Sue : Wow, this is exquisite craftsmanship.
スー : 素晴らしい出来ですね。
Sue : Are these Japanese characters?
スー : これは日本語ですか?
Staff : Yes. The word “Shigi” is written here in Japanese Kanji.
店員 : はい。「志義」と漢字で書かれているんです。
Sue : Does it have a special meaning?
スー : 特別な意味があるんですか?
Staff : It’s the name of a place. Now it’s changed, but there used to be a district called “Shigi” and this kimono is from that region.
店員 : これは地名です。今は変わってしまいましたが、昔は志義町と呼ばれていた地域の着物なんですよ。